祭 神:八意思兼命 説 明:八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)、八意は、立場を変え て思いを巡らすとの意味し、思兼は、種々の分別を意味する言葉で すから、この神様の賢さ、思いやりの深さがどれくらいのものか、 想像がつくでしょう。 高御産巣日神(天御中主神・神御産巣日神と共に、一番始めに高天 原に成った造化三神の一人)の子供でもあります。 この神社の伝説を説明しましょう。 天武天皇の時代、唐の高宗から、七曲の玉(七回曲りくねった孔の 空いた玉という意味か?)を渡され、「この玉に糸を通さねば、戦 争をしかけるぞ」と言われたことがあったのだそうです。 天皇は頭の良い重臣を集めて相談しましたが、誰もよい知恵を思い つくことができませんでした。 そこに、どこからともなく一人の翁が現れ、「蟻に糸をつけて、孔 に置けば、勝手に出口まで歩いてくるだろう」と知恵を授けます。 喜んだ天皇が、名前を尋ねると、 「七曲りにまがれる玉の緒を貫きて蟻通しとは誰か知らずや」 と、言って消えてしまったと。 「これは神様に違いない!」とその跡を訪ねると、この神社についた のだそうです。 そこで、この神社に「蟻通」の名前を賜ったのだそうです。 住 所:和歌山県伊都郡かつらぎ町東渋田蟻通790番地 電話番号: ひとこと:このお話、なぁんか知ってますよね。 そうそう、「姥捨て山」ですよ。 「“60歳以上の人間は、山に捨てよ”という領主の掟に従えなかっ た平吉は、年老いたお母さんを、裏山の洞窟に隠して、三度三度の ご飯を運んでいました。 そんなある日、この国に隣の大国から「これから出す難題を三日以 内に解けなかったら攻め滅ぼしてしまうぞ」と、ニ匹のそっくりな 馬を送りつけられ、「どちらが親か当てて見よ」と。 領主が困っていると、領民の平吉が「恐れながら、ニ匹の馬の間に 飼葉桶を置いて、その飼葉桶をもう一匹の方に押しやったのが親で あります」と申し出ました。 まさか、この難問を解くとは思っていなかった隣国の領主は、また 難問を出してきます。「灰で縄を綯え」と。 またまたしゃしゃり出た平吉、「縄を綯う時、塩を摺り込んでおい て、それを燃やせば、縄の形のまま灰になりまする。」と申し出ま す。 ところが、隣国の領主はしつっこい。納豆並の粘り気です。 「これで、最後だ。この玉に糸を通せ」と、曲がりくねった孔の空い た玉を送りつけて来ました。その度行ったり来たりする使者は、大 迷惑です。 もう、この国の領主は、平吉がなんか知恵を出すことを疑っており ません。平吉を呼びつけて、「ほれ、なんか考えてみなはれ」と、 扇子を口にあてたりして、余裕です。 ところが平吉、ここが正念場ですから、重々しく、 「私では無理でございます」と。 領主は慌てます。そりゃそうです。平吉を当てにし切ってたわけで すからね。 「実は、今までの難問に答えてきたのは、全て60歳を越えた母親で して、領主様が、この母親を捨てろとおっしゃるなら、この問題を 解くことはできません」嫌味な言い方ですね。素直に、「問題を解 きますから、お母さんを捨てさせないでくだせ〜」って言えばいい のに・・・。まぁ、勝手な領主に一泡ふかせて、すっきり!っての はありますが。 ま、そんなわけで、領主は、「母親を助けるから、すぐ呼んできて 知恵を出させい」と、平吉に言いつけたわけです。 呼ばれた母親は、「恐れながら・・・」と、糸をつけた蟻んこを孔 に入れて、孔の出口に蜂蜜を塗っておくという方法を教えます。 隣国の領主は、「あの国は小さいけど、賢い者がいるらしい。数で 攻めても、知恵で負かされるかも知らん」と恐れおののきながらも、 「難問をといたんやから、しゃぁないな。今日のところは、これくら いにしといたろ」(池之めだかさん風にお願いします)と、虚勢を 張りつつ、攻撃を諦めました。 この国の領主も、「また隣国が難問出してきたとき、このおばあさ んがおらんかったら困るな」と計算高く考えたかどうかは分からな いけれども、ともかく、 「私が間違っていた、年寄りは、捨てるべきものではなく、宝として 扱うべきものだ」と、60歳以上は捨てよとの掟を取り下げ、めで たし、めでたし。 おばあちゃんの知恵袋が、ひとつの国を救ったという、なかなか壮 大な、お話です。このお話の元が、この神社の伝説なのでしょうか。 この神社の狛犬の足をくぐると疫病が軽いという伝説もあったりし て、由緒の古さを感じる神社です。