祭 神:天照大御神 豊磐門戸命 櫛磐門戸命 天磐戸別命 説 明:案内板によりますと、 「柳生戸岩谷の天乃石立神社は、延喜式神名帳に記載されている式内社 である。 延喜式は一千年前延長年間に撰せられたもので、その神名帳には、全 国の官国弊社2132座を記載しているが、戸岩谷の天乃石立神社も、 小社としてその中に加わっている。 天乃石立神社は、天照大御神、豊盤門戸命、櫛盤門戸命、天盤戸別命 となっているが、神体は扉の形をした巨岩(花崗岩)、前伏盤、前立 盤、後立盤の三つに割れている。 前立盤は高さ六メートル、幅七.三メートル、厚さ一.二メートルあ って、全体が扉の形をしている。 伝説によると、神代の昔、高天原で手力雄命が天岩戸を引き開けた時、 力余ってその扉石が虚空を飛来し、この地に落ちたのだという。 巨岩崇拝の好適例で、古来土地の人達の信仰は深く強いものがあった。 正保二年(西暦1645年)但馬守宗矩は、参道を修理して並木を植 えているし、宝永二年(西暦1705年)柳生宗弘(のち藩主俊方) は、能舞台を建て、石燈篭を寄進し、寛保二年(西暦1742年)藩 主俊平も、石燈篭を寄進している。」 とあります。 住 所:奈良市柳生町柳生岩戸谷789 電話番号: ひとこと:写真ではよくわかりませんが、確かに、びっくりするほど大きな、岩 で出来た扉なんです。 信仰の対象となるのが、自然と納得できる磐ではあります。 さて、豊磐門戸命・櫛磐門戸命・天磐戸別命は、古事記に出てくる神 名で、全て、同一神の別名とされています。 邇々芸命に従って、降臨した神々のうちの一柱で、天照大神が篭った 岩屋戸を神格化したものであると解されているようです。 つまり、この神社の伝説。 「岩戸の扉石が飛来したもの」と合致しますね。 さて、豊磐門戸命・櫛磐門戸命に関しては、旧事本紀・古語拾遺では、 「殿門(天岩屋戸)を護る神」として描かれています。 手力雄命が、岩戸を開け天照大神を引っ張りだし、天児屋根命と太玉 命が注連縄を岩戸に張り巡らせ二度と天照大神が中に入ることができ ないようにした後、豊磐門戸命・櫛磐門戸命が、この岩屋戸を護った となっています。 さて、日本のかなり多数の神社仏閣では、「仁王」様が門を護ってお られます。 中国でも地方によれば、「門神」と言って、玄関を護る二人の神の絵 姿を、玄関に貼ってあるのを見ることができるそうです。 道教の伝説で、鬼門を警護する神も、神荼と鬱塁という二人の神様で すね。 これは、山海経に出てくるお話しで、 「東海に浮かぶ度朔山に三千里にも枝を広げた大きな桃の木があり、そ の東北に生えた枝は、門のようになっていて、多くの鬼が出入りして いた。 そこで、その門を鬼門と言った。 ただ、害をする鬼も多数出入りしたので、神荼と鬱塁が見張り、害を なす鬼が入ろうとすると、これを捕らえ、飼っていた虎に食わせた。」 なんて話です。 日本でも、東北を「鬼門」と呼びますね。 さて、門神に関わる、「西遊記」に出てくるお話しを紹介しましょう。 長安の袁守誠は、優れた易者で、魚のいる場所を占っては、漁師に告 げたので、長安の漁師はいつも大漁でした。 ところが、それを知った竜王は、怒って、人間に化けて、袁守誠に、 翌日の天候を占わせるわけです。 袁守誠は、ある時刻に雨が降ると占いますが、雨を降らせるのが仕事 の竜王は、(明日雨を降らせろとの命令は、玉皇からきていないのに) と考え、「もし明日雨が降らねば、お前の家を壊してやるぞ」と脅し て住処に帰るのです。ま、勝ちを確信した勝負ですから、どんなでか い態度にもでられますわな。 ところが、程なくして、玉皇から、明日、正しく袁守誠が告げた時間・ 量の雨を降らせろとの命令が下って、竜王びっくりがっくり。 口惜しがった竜王は、わざと、時間と量を少しずつ変えて降らせるん ですね。大人気ないですね。 しかも、「約束だ」と、袁守誠のうちを壊します。 ところが、です。これは、立派な命令違反なんですね。天罰がくだり、 竜王は、太宗の宰相である、魏徴から首を切られることになってしま いました。 ・・・えらく罪が重いとお思いでしょうが、それくらい雨は大事だっ たんでしょうね。 竜王は困ってしまいます。 そして、こともあろうに、袁守誠に相談します。馬鹿ですね。情けな いですね。プライドないですねぇ。 ところが、立派な易者・袁守誠は、快く相談に乗ります。 そして、太宗に命乞いをすることを助言します。 「魏徴が眠れば、昇天して、私の首を切るでしょう。処刑の時間に、魏 徴を眠らせないでください」と。 太宗は、何故か竜王を哀れに思い、魏徴を眠らせないことを約束しま す。これが、禍の元となるとは知らずに。可哀想な太宗。 魏徴にとっても、竜王の首を切ることは、天からの命令です。 こっそり居眠りをして、見事竜王の首を切っちゃいます。 ところが。 ところが、竜王は、逆恨みします。 魏徴にでなく、彼をうっかり居眠りさせてしまった、太宗を恨むので す。 思うに、太宗は、おひとよしだったんでしょうね。 毎晩毎晩、夢枕に立って、「約束破った〜〜。約束破りの太宗〜〜。」 と恨み言を述べる竜王に、太宗は、どんどんやせ衰えていきます。 それを哀れに思って、やってきたのが、秦叔宝(しんしゅくほう)と 尉遅敬徳(うっちけいとく)です。 彼等は実在の人物なんですが、神格化されてるんですね。 それでやっと太宗に安らぎが訪れ、めでたしめでたし。 この物語の教訓はなんでしょうね。 「(竜王のような)つまんない人間にはなるべく関わるな」 かな?