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天高稲荷神社

tentakainari




  祭  神:天高大明神
  説  明:伏見稲荷から勧請してこられた稲荷神社で、倉稲魂命を祭祀し
       ておられる神社です。
  住  所:大阪府堺市豊田
  電話番号:
  ひとこと:稲荷神社に相応しく、田の中に建っている神社です。
       小さな祠ではありますが、本殿は鮮やかな朱色でした。

       ・・・と誉めるのは訳がありまして(^^ゞ

       ・・・・・・・・・・・・・。
       平成14年3月17日のことじゃ。
       大阪の空はよ〜ぉく晴れておったそうじゃ。

       大阪のな、河内にな、大層仲のええ夫婦がおったそうじゃ。
       しかし、女房の方は少々癇癪もちでな。
       のんびりした性格の亭主が、のほほんとしていると、尻を蹴飛
       ばしたりするようなこともあったんじゃて。

       じゃが、もともと呑気で、尻の皮も厚い亭主は、あんまり気に
       してなかったんじゃと。

       女房は単純なところもあって、車に乗せてやると、機嫌を直し
       よるんじゃ。
       そこで、亭主が、150キロ以上のスピードを出して走ってや
       ったりすれば、一発で機嫌を直しておおはしゃぎしよる。

       その上、そのまま、どっかの神社まで運んでやったりすれば機
       嫌悪かったことなんぞすっかり忘れて、亭主を惚れ直して、神
       社の建物をじろじろ観察したり、神様について、勝手な妄想を
       めぐらしたりしよるんじゃ。

       じゃが、亭主の方も、女房の機嫌が悪くなる度に、神社に連れ
       て行ってやってたもんで、日帰りで行って帰ってこれる大きな
       神社はどんどんなくなっていきよった。
       一度行った神社にもう一度連れていっても、初めて行く神社ほ
       ど、女房は喜ばなかったからじゃ。

       そんなわけで、亭主は、どんなに小さな神社でも、見付けては、
       覚えておいて、女房の機嫌の悪いときにはそこに運ぶようにし
       ておったんだそうな。

       その日、女房は、一段と機嫌が悪かった。
       亭主は、風邪気味で調子が悪かったんじゃが、女房を連れて出
       かけることにした。

       女房は、「でかい公園に行きたい」と言いよったので、奈良公
       園に連れて行くことにしたんだそうじゃ。
       しかも、奈良公園の側にある「春日大社」には、まだ女房を連
       れて行ったことがなかったので、亭主は好都合じゃと思うたん
       じゃな。

       奈良と言うたら、鹿じゃ。
       この時期、小鹿がたくさんいて、なかなか可愛いところを見せ
       ておるんじゃと。
       
       女房は、動物が大好きというわけでもないが、まぁ、自分が動
       物じみておるからじゃろうか、鹿を見るのは楽しそうじゃった
       と。

       それなのに、なんとしたことじゃ。
       鹿が、女房のおやつを横取りしたではないか!
       女房は、大暴れして抵抗したが、鹿はかわいいだけではないん
       じゃな。なかなか兇暴なんじゃあ。

       女房の機嫌は最悪じゃ。
       このままうちに帰ったら、きっとまず〜いまず〜いご飯を食べ
       させられてしまう。

       亭主は焦った、そして、思い出した。
       自分の実家の近くにまだ参拝していない小さい稲荷があること
       を。

       亭主は何も言わずに、高速を飛ばした。
       スピード狂の女房の機嫌を少しでもよくする為に、飛ばした、
       飛ばした。スピードメータが振りきれるかと思うほど飛ばして
       その小さい稲荷に着いたんじゃ。

       神社は本当に小さな祠じゃった。
       女房は、ちらりと祠を見、「田圃の中に稲荷さんとはなかなか
       効率的やね」と、少し面白がったようじゃ。
       もう一息じゃ。何か女房が喜ぶことがないものか。
       亭主が気を揉んでいた時。

       神社の中から、村人が出てきたじゃ。
      「今日はお祭りなんですよ。ささ、どうぞ中に入ってお参りくだ
       さい」と中に通してもらったじゃ。

       女房は、いつも閉っている本殿の中を見せてもらって、上機嫌
       じゃ。眉の間の皺がいつの間にか、3本から1本に減ってたん
       じゃと。

       女房が参拝して、本殿の中をじっくり拝見した後、最後の皺も
       消え、満足気に帰ろうとすると・・・。

      「あぁ、折角だから、撤撰持って帰ってください」
       村人が声をかけてくれたんじゃ。
       しかも、お砂糖なんぞじゃなく、おまんじゅうじゃ。

       女房は、ほくほくしながら、おまんじゅうを頂いて、この神社
       を誉めて誉めて誉めまくって紹介することを誓っておった。

       そして亭主は言っただよ。
      「今日はうちの実家へ言って、ご飯食べて帰ろう」
       女房にとっては、ご飯をご馳走になるうえまんじゅうももらえ
       る。
       泣きっ面に蜂の反対バージョンじゃ。

       亭主の実家でご馳走になった後、女房の不機嫌はすっかり直っ
       ていたと言うことじゃ。

       亭主にとっては、ほんまに霊験あらたかでありがたい稲荷さん
       じゃった。

       そんなことから、人々は、この稲荷は、「夫婦喧嘩によく効く」
       と益々尊崇したということじゃ。

       あぁどっとはらい。

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