祭 神:阿治須岐高日子根命 荒魂 説 明:奈良県神社庁発行の『かみのみあと―大和の聖地―』に捨篠神社についての説明があ りましたので、引用します。 「この池はアジスキタカヒコネノミコトの荒御魂をまつった池である。この神はオオナ ムチノカミの長子で、高鴨神社にまつられている。高鴨神社は御所市にあり、ここに はこの神の和魂をまつる。捨篠神社は興田村、いまの興田村の捨篠池で、池を御神体 とする。役行者のトラメが、この神社に参詣した際、蛙が池より出て蓮の葉に乗って 浮いていた。彼女が池の傍の篠を取って蛙に向かって投げたところ、蛙の目にあたっ た。これからこの池を捨篠の池と名づけたという。篠が蛙の目を損じたので、この池 には、今も片目の蛙が住んでいる。この池には一本の茎に二個の花をつけた蓮があっ たので奇瑞として朝廷に奉ったこともあった。 小角は幼少のころから明敏であったが、人が問うて『汝の父は、どこにいるのか』と いうのに答えて、小角は天を指すので不思議に思うたが、四つの時、母が、また父の 事を問うと、小角は、また前のように天を指し、今日は父に逢おうと思うといって捨 篠の池にゆっくり歩いていった。母が不思議に思ってこれについてゆくと、小角は池 に向かって拝していた。しばらくして、水面に人影があらわれたので、小角が、合掌 して、願わくばお顔を拝みたいというと、たちまち微風が吹いて水が波立ち、そこに 白髪の老翁がチガヤにのって水面にあらわれた。彼は『われは賀茂の神、アジスキタ カヒコネノミコトである。汝の母は我が後裔である。さきに子どもがいないのを悲し み、余にいのること切なるによって、汝をさずけた。しかるに角麻呂は早世した。汝 は幼少から孤児になる。われこれをあわれみ野口村のカモノキミトツキマロは、わが 後裔であるから彼をして育てしめんと思う。これをあやしむなかれ』といって、姿を 消してしまった」 蓮池にある説明を引用します。 「奥田蓮池のひとつ目蛙 役の行者の母刀良売は、この蓮池の近くで療養していましたが、ある朝、池の中の捨 篠神社に詣でました。すると、池の中から光かがやく蓮の茎がのび、ふたつの白蓮が 咲いたのです。蓮のうてなでは金色の蛙が鳴いていました。刀良売は何げなく、萱を 一本抜き取って蛙に投げると、あろうことか蛙の目を射抜き、片目を失った蛙は水の 中へ沈んでいきました。 そして、あたり一面を彩っていた誤植の霧と白蓮は消えて、 もとの土色になったひとつ目蛙が浮かび上がってきたのです。刀良売はそれから重体 になり、とうとう亡くなってしまいました。母を失った役の行者は、このことを契機 に発心、葛城山で修業を積み、修験道を開いたのです。そして吉野の山奥にわけ入り、 蔵王権現をあがめ、蛙の追善供養と母の菩提をとむらいました。いまも毎年七月七日 には、奥田の村人が早朝から蓮池の蓮108本を切りとり、刀良売塚に詣でた後、吉野 山蔵王堂に持参し、蓮華会の行事のひとつである「蛙とび」がおこなわれます。そし て翌日、蔵王堂から大峯山への沿道のお堂に蓮を献じて蛙の供養をしています」 住 所:奈良県大和高田市奥田 電話番号: ひとこと:夏になれば必ず行く蓮池でしたが、阿治須岐高日子根命の荒魂を祀るとは知りません でした。 それにしても不思議な伝承だと思いません? なんの教訓もないじゃないですか。 そもそも、なんで蛙に篠を投げる? あんなに可愛い蛙に、そんなひどいこと、します? つまりこの説話は、教訓として生まれたものじゃないってこと。 とすれば、なんらかの暗喩なのだと思われます。 ではなんなんだと思います? 蛙に篠を投げて片目をつぶすって。 一番単純に思いつくのは、古代戦争でしょうか。 役行者を代表とする賀茂朝臣たちが、蛙が象徴する敵を倒したという。 そして、そこに自分たちの氏神様の荒魂を祀るのは、祟り封じ? ……と思えもします。 なら、役行者のエピソードは何を意味してる? あるいは……敵の大将の落とし胤だったりして……。 いや、その反対で、ここで滅ぼされたのは、役行者の一族で、小角はその生き残りだ ったとか。 ……いろいろ妄想してしまう伝承ではありませんか? それに、先代旧事本紀巻第四『地祇本紀』には、 「味鉏高彦根の神が、倭の国葛上郡高鴨に鎮座される社を捨篠社という」 とあるんです。 ここにある捨篠社は高鴨神社のことでしょうね。 とすれば、高鴨神社には味耜高彦根の和魂、ここ捨篠社には同じく荒魂が祀られてい たとか、そんな話しでもあるのでしょうか。 もしそうなら、蛙はいったい何の暗喩なのでしょう。 むっちゃ気になりますわ~。 *********** 2019年7月7日、捨篠池の蓮取り神事を見学しました。 10時になるとほら貝が吹き鳴らされ、修験者たちによる般若心経読経が始まります。 米・酒・塩の順番で池に撒かれ、出席者が蓮を献花します。 般若心経は次々別の真言に変わっていくんですが、音をひろって調べてみても、誰の 真言なのかわからない(^^ゞ 献花が終わると、最後に刈り取り役の方に鎌が手渡され、またほら貝がならされます。 それと同時に、池では蓮取りの船が出発し、池を一周した後蓮の花畑へ。 花を2~3本、刈り取って戻ってきたら、お祭りは終わりです(笑) 蓮は金峯山寺に運ばれますが、私は追いかけず。 金峯山寺では、蛙飛びの行事が行われるんですが、この蛙は破戒僧。 蛙の姿に変えられましたが、反省したため、人間の姿に戻ります。 ……つまり、奥田蓮池の蛙とはまったく別の蛙ですよね。 それがいつ、どういったきっかけで習合したのだか。 蓮取り神事は一瞬で終わるんですが、すごい見学者の数でした。 金峯山寺まで行く「蓮の道バスツアー」なるものが催行されるようですから、みんな 金峯山寺まで行くのかもしれません。