祭 神:天児屋根命 神功皇后 誉田別命 玉依姫命 天照皇太神 火之戸幡姫命 説 明:案内板によりますと 「火幡神社は、社伝によると平安時代前期大同元年(西暦806年) に創建されている。 創建当時の祭神は、火之戸幡姫命で、布を織る人々の信仰の対象 であり、神社附近には布織集落が多かったことが推察できる。 当時多くの神社は武人の神であったのに対し、火幡は唯一産業新 興祈願の神であり、広く庶民の信仰を集めていた。 境内の広さ、神を祀る拝殿への参道等、大社を思わせる作りであ り、貞観元年(西暦859年)正月には従五位を授けられている。 現在の本殿は神明造りの三間社で屋根は桧皮葺であるが、創建当 時は朱塗りの社殿で緑に映え、荘厳なものであっただろうと思わ れる。 広大な敷地に摂社がある。戦国乱世の時代に五穀豊穣の神などが 合祀され現在の祭神となっている。」 とあります。 住 所:奈良県北葛城郡王寺町畠田640 電話番号: ひとこと:延喜式内社です。 火之戸幡姫命は、フルネームで書くと、「火之戸幡姫児千千姫命」 万幡豊秋津師比売命=栲幡千千姫の別名だと言われます。 さて、この火之戸幡姫or万幡豊秋津師比売命or栲幡千千姫とは、 どんな神様でしょうか。 万幡豊秋津師比売命の名前を分解して解くと、 万幡は多くの機織を。 師は技師を。 豊秋津は上質の布を。 それぞれ示すのだそうで、まさしく機織の神様ですね。 神話には、天忍穂耳命の奥さんとして出てきます。 瓊々杵尊(紀の一書では、天火明命・旧事本紀では饒速日命も) の母親ということにもなります。 父親は、高木神。血筋も正しい、姫君ですね。 さて、この旦那の、忍穂耳命を見てみましょう。 日本書紀では、出雲国譲りの交渉をすませた天照大神から、 「出雲の国を治めなさい」 と命令されるも、 「丁度息子が生まれましたから、この息子に治めさせましょう」 と手柄を息子に譲った穏やかなお父ちゃんということになってい ます。 しかし、古事記(日本書紀の一書でも)では、天照大神に、 「出雲はあんたが治めるべき国やし、ちょっと行って交渉してき」 と言われて、しぶしぶ出かけるも、 「騒がしくて怖くて、やだっ!!」 とすぐ引返してくる、腰抜けちゃんです。 その後、いろんな神様が出かけて、やっと出雲を平定した後、 天照大神が、 「ほれ、家臣に言うて、平定したったから今度こそ行きや」 と言うと、 「いや、私に子供ができましたんで、これに行かせましょ」 と、息子にこの役割を押し付けた、ダメ親父でもあります。 よっぽど地上に降り立つのがいやだったと見えます。 その夫を支える、火之戸幡姫は・・・。 以下妄想。 ***** 甘えん坊な夫・忍穂耳は、その晩、愛妻・火之戸幡姫に膝枕を してもらいながら、くつろいでおりました。 ト、しじまを壊す大音量で、 「どんどん、どんどん。母上・天照大神様からの使者でござる」 ビクッとするオシホミミ。 「ね、ホノトちゃん。僕、いないって言ってくれない?」 ホノトは、こんな夫を見ると、いつも情けなく思うのですが、 尊敬する姑・アマテラスに、 「ホノト。オシホミミを頼んだわよ」 と心からのお願いをされてしまっているので、し方ありません。 自分が頑張って、夫が皇に相応しい男になるようにしなくちゃ。 ぎゅっと手を握り締め、戸口に向いました。 「夫は留守です。何用ですか?」 「アマテラス様から、出雲国を平定するように、とのご命令です」 「夫に、平定せよとの仰せですか? 出雲は蛮族が跋扈する危険な場所であると聞いています。 畏くも、わが夫は、アマテラスの皇子ですよ。 夫の身になにかあればどうします? そう、お義母様にお伝えください」 凛としたホノトにそう言われた、使者は、引き下がるしかなく、 その旨をアマテラスに伝えました。 伝言を聞いたアマテラスは、 「オシホミミは、怖くて逃げたのね。こんな筋道だったことを言 えるのは、ホノトに違いないわ」 と、すぐピンときます。 親馬鹿とはいえ、さすがに女帝。頭が悪いわけではないのです。 情けない息子だとは思うけれども、帝の位は、我が子に継がせ たい。間違っても、スサノオの子供、ヤシマジヌミなんぞに継 がせるのは嫌なアマテラスは、家臣の中でも武勇の誉れの高い 者を選び出し、出雲平定を成功させました。 これで、あの子・オシホミミも行く気になるだろう。 そんな母親の切ない願いもむなしく、オシホミミは、 「あ、鳥さんが飛んでる。鳥さん、鳥さん・・・」 などと、精神が弱い振りまでして、逃げ回るのでした。 「ホノト、お願いよ。息子をやる気にさせてちょうだい」 アマテラスがここまでホノトを頼るのには理由がありました。 ホノトは、タカギおじさんの娘。自分にとっても縁続きなので す。 アマテラスは、本当は、ホノトの方が、オシホミミよりも帝に 相応しいと分かってはいました。 でも、息子を差し置いてその妻を女帝にするなんて。 母親としてはできなかったのです。 「お義母様。女帝様。あなたはお強いお方です。でも、オシホミ ミ様は、そうではありませんわ。どんな生き方をすべきかは、 人によって違うと思うのです。どうぞ、この人にあなたの生き 方を押し付けないでくださいまし」 賢い嫁にこう言われては、さすがのアマテラスも何も言えませ んでした。 幸い、孫のニニギがいます。 この子が成長したら・・・。 女帝は、そんな祈りを込めて、我が孫を見詰めたのでした。 ***** お好みで、 アマテラス を 持統天皇 オシホミミ を 草壁皇子 ホノト を 阿閇姫 ニニギ を 珂瑠皇子 と置き換えて読んでくださっても結構です。