祭 神:鏡大王 説 明:談山神社のご祭神・藤原鎌足公の妻です。 彼女は、中大兄皇子の思い人であられましたが、大化改新後、 鎌足公に嫁いだと言われます。 また、額田大王の姉君であるといわれます。 住 所:奈良県桜井市多武峰319 電話番号:0744−49−0001 ひとこと:この時代、権力者は、唐や新羅と頻繁にやりとりをしました。 ですから、語学に秀で、詩歌に長じた女性を妻とすることが、 権力者には大事なことだったようです。 額田大王や鏡大王のような、容姿が優れ、語学が堪能であっ たと言われる女性は、いろんな権力者が手に入れようと、力 を尽くしたのでしょう。 額田大王も、大海皇子妃から、天智天皇妃になっています。 彼女らの気持ちがどのようなものだったのかは、わかりませ ん。が、想像のよすがとして、いくつかの歌が残っています。 「妹(いも)が家も 継ぎて見ましを 大和なる 大島の嶺に 家もあらましを」 −あなたの家もひき継ずき見ていたいものだが、それもでき ない。大和の大島の嶺のほとりに私の家があればよいのだが− という天智天皇の歌に対して、鏡大王の詠んだ歌 「秋山の 樹の下隠り 逝く水の われこそ益さめ 御思よりは」 −秋山の樹の下の見えないところを通る水が増えるように、 私は天皇が思って下さっている以上に深くお慕い申し上げる ことでしょう− 天智天皇の歌に比べ、彼女の歌は深く、激しく、強い。 「外交のための道具」であれば、こんな歌は詠めないでしょう。 また、藤原鎌足公が鏡大王に恋をしかけたときに歌った歌、 「玉くしげ 覆ふを安み 開けていなば 君が名はあれど わが名し惜しも」 −夜が明けてからお帰りになると、あなたのお名前はともか く私の浮名が立つのは困ります− いかがです、なんと手ひどい仕打ち。 「あんたなんか目じゃないわよ」とでも言うようです。 そして、その後、彼女が鎌足公に嫁いだ後に詠んだ歌は、こ んな具合です。 「風をだに 恋ふるは羨し 風をだに 来むとし待たば 何か嘆かむ」 −あなたが風だけにしろ恋うているのがうらやましい。訪れ る人さえない私は、風だけでも来るかと待つのなら、私はこ んなに嘆いたりはしません− これは、額田大王の、 「君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く」 −あなたを待ち、恋しく思っていると我が家のすだれが秋風 でゆらぐ− に唱和した歌で、鏡大王が、来ない人を待ちわびているとい うのがわかります。 額田大王が待っているのは、天智天皇だと題に書かれていま すが、鏡大王が虚しく待ちわびているのは? この歌は、鎌足公が亡くなった後の歌ではないか、と言われ ています。 もし、そうならば、彼女は、昔天智天皇を激しく愛したのと 同じ以上にもっと鎌足公を愛したのでしょう。 さて、この神社は、「恋神社」と呼ばれています。 「恋する女の神社」なのでょうね。