祭 神:宇賀魂命 説 明:案内板を転記します。 「篠山城主青山忠裕公が幕府の老中であった、文政年間(1818〜30)の ころ、毎年春と秋、江戸両国の回向院広場で大相撲が開催されていました。 ある年の春場所に、篠山から小田中清五郎ら八名の力士が現れ、全員が勝ち 続けました。 負け嫌いの忠裕公は大変喜んで、褒美をやろうとされましたが、姿が見当た りません。 調べてみると、なんと皆領内のお稲荷さんの地名でした。 殿様は幟や絵馬などを奉納して感謝したと言います。 豊作や勝利を祈る神です。」 住 所:兵庫県篠山市小田中100 電話番号: ひとこと:負け嫌いの篠山城主・忠裕公のために、篠山のお稲荷さんが、力士に化けて、 勝ち続けた。 シンプルで、何か楽しい話なんですが、なんとなくしっくりきません。 まず、なんで、お稲荷さんが、忠裕公に力を貸したのかがよくわからない。 由緒には、忠裕公が負け嫌いだった、と説明されていますから、お稲荷さん も負け嫌いだったので、忠裕公に共感して力を貸してくださったのかもしれ ませんね。 次に、力士とお稲荷さん、という組み合わせが、なんだか意外です。 だって、お稲荷さんの眷属といえばお狐さんですよね? 狐さんって、頭の良い動物というイメージです。 筋肉派というよりは、頭脳派ですよね(笑) ・・・でも、お稲荷さんといえば狐、となったのはいつからなのでしょう。 そもそも、稲荷の起源として有名なのは、山城国風土記逸文にある、「伊奈 利の社」でしょう。 「風土記にいう、・・・伊奈利と称するのは、秦中家忌寸らの遠祖伊呂具の秦 の公は稲や栗などの穀物を積んでゆたかに富んでいた。それで餅を使って的 とし(て的を射)たので(餅)は白い鳥になって飛びかけって山の峰に居た。 (その白鳥が化して)伊禰奈利(いねなり)生いた。遂に社名とした。その子 孫の代になって(先祖の)あやまちを悔いて、社の木の根こじて引き抜いて 家に植えてこれを祈り祭った。いまその木を植えて息づけば福が授かり、そ の木を植えて枯れると福はない、という。」 この逸話をご存知の方は多いでしょう。 つまり、これを見るに、稲荷神の根元といえるのは、「米」ではないでしょ うか? そして、その化身は、白い鳥。 狐のイメージはどこにもありません。 いなりを「稲生」と表記する場合もありますし・・・。 やはり、「稲荷」とは、「米」なのでしょう。 そう考えると、力士との関わりも、なんとなく見えてきます。 例えば、相撲に欠かせないのが土俵。 「土」の「俵」ですよ。 日本書紀によれば、力持ちを自慢する當麻蹴速を憎しとされた垂仁天皇が、 気は優しくて力持ちな野見宿禰と戦わせたことが、相撲の起源である、とさ れています。 だとすると、稲作と相撲の関係はない、と日本書紀は言っているのでしょう か? いや、そうとも言えません。 なにしろ、勝者である野見宿禰の褒賞は、當麻蹴速から没収した土地なわけ ですが、そこには「腰折田」があった・・・と明記されていますし・・・。 苦しいかな(^^ゞ まぁ、とにかく。 ここ、篠山では、お稲荷さんが、力士に化けたわけです。 篠山において、稲荷と力士はなんらかの深い関係があった・・・か、もしく は、篠山において、お稲荷さんは、一番格の神様とされていたのではないで しょうか。 領主が困った時、力を貸してくださる筆頭の神様が、お稲荷さんだった。 もしそうだとしたら、篠山という土地とお稲荷さんは、深いつながりのある 土地であった、と言るでしょう。 さて、 丹波篠山といえば、何を思い出します? 私は「栗」です。 ちょっと強引ではありますが、「栗」も主食となり得る「穀物の一種」とさ れていますよね。 縄文人も、栗などを主食としていた、と社会科の授業で習いました。 とすると? ・・・う〜ん、どうも錯綜しちゃってます。 風土記の中の記述を見ると、「わらしべ長者逆バージョン」とも見えますよ ね(笑) 米を餅にした上に、弓矢の的にしたものが、白い鳥となり、そして紆余曲折 を経て(?)木となった。 ここらへんに鍵があるのかもしれません。 しかし・・・。 これがもし、なんらかの暗喩だとしたら、超一級の暗号です。 米も餅も高級主食ですよね。 餅は米を加工したものですから、最高級主食だと言えるかもしれません。 それを弓矢の的にする。 弓矢の的とは? 弓矢の的と言って思いだすのは、那須の与一の逸話です。 源平合戦の時、平家の姫ぎみが、船の上から、扇を差し出し、 「那須の与一よ、そなたが本当に弓の名手なら、この扇を射てみよ」 と挑発するんですね。 つまり、弓矢の的が指し示すものとは・・・なす! ・・・というのは、ほんの冗談です・・・。 ということで、真面目に考えると、「注目の的」という言葉があるように、 何かを惹きつけるもの。 「射られるもの」なわけですよね? それが暗喩するものとは一体なんでしょう? 皆が欲しがる土地・・・とかね。 そうすると、 高級食材が土地に化けた、なんて読み方もできます。 つまり、豊富な食材を奉納し、その見返りに、土地をもらった、とか。 しかし、それだけでは済みません。 それが鳥に化けます。 鳥とは? 鳥とは空を自由に駆け巡るもの。 古来日本においては、魂を鳥と見立てました。 そうすると・・・。 う〜〜〜〜ん・・・なんか話が変になっちゃいます。 ここは、鳥を、「自由に貿易することが出来る免許」と見てはどうでしょ? 言って見れば、年貢を納める代りに土地を授かって、それから自由貿易の許 可を得た。 そして、最終的に、木になった・・・。 木? 木、木ですか? 木は、その根元に人が集まってきて休息する場所・・・とかですかね? つまり、王の位・・・とか。 そうすると、こうなります。 栗を主食しとしていた人々の村に、米を主食とする人々が到来した。 そして、米もしくは、米に比喩される素晴らしい「種」・・・技術?・・・ を伝授する変わりに土地を授かり、また、自由貿易の許可を得、どんどんそ の力を得ていった。 そして、遂には王となったのである。 その人物もしくは集団とは? 「伊奈利の社」の主人公は、「秦中家忌寸らの遠祖伊呂具の秦の公」。 !!!!! そうだったのか!!!!!! その王とは、秦氏!!!!!!!! ・・・かくして、トンデモ説となっていくのであった(T_T)・・・ まぁ、確かに上記の話は与太話ではありますが、「伊奈利の社」については 再考の余地が、有り余ってるように思います(~_~)