採取地域:京都府 ひとこと: 原 典:今昔物語 登場人物:弘法大師 修円 物 語:日本のお坊さんの中で、一番の有名人は誰でしょう? 仏教に関わる人、というくぎりにすると、聖徳太子が一番になるか も知れませんが、お坊さんに限れば、弘法大師=空海がダントツじ ゃないでしょうか? 杖で水脈を掘り当てたなんていう、ある種、山師的なことから、そ の文才で、唐入国の許可を取り付けたことなど。 口と両手・両足を使って、同時に5行の文章を書いた話。 その他、あげればキリがないほどのエピソードを持つ、僧です。 そんな弘法大師のライバルというと、誰だと思いますか? 「最澄」 そうですよね。 社会科の授業でも、「真言宗は、空海」「天台宗は、最澄」とペア で覚えましたし、知名度の上から言っても、この比叡山の開祖が、 空海のライバルといってよいのでしょう。 でも、空海に限って言えば、生涯に、いろんなライバルが登場する んですよ。 まず、空海が東寺の住職だったとき、西寺の住職を務めた、守敏。 法力争いに敗れた守敏が、空海の雨乞いの邪魔をして、全ての龍 (龍が雨を降らせると信じられていました)を隠した、なぁんて話が 残っています。 しかし、結局空海は、大雪山北の無熱池に棲んでいた善女竜王を探 し出し、雨乞いに成功します。 空海は、たくさんのライバルがいると同時に、負け知らず、でもあ るんです。 さて、今昔には、空海のライバルとして、修円という僧が登場しま すが、このライバル関係は、「邪魔する」なんてかわいいもんじゃ ないんですね。 なんと、お互いに呪詛しあったというから、穏やかじゃありません。 そのきっかけってのが、また、あまりにも些細なことで、笑っちゃ うんですよ。 空海が唐にいた時、修円は嵯峨天皇の前で、法力により、栗を煮て 見せるんです。 天皇がそれを食べてみると、むちゃくちゃうまい。 それで、その後、しばしば修円は天皇の御前に呼ばれ、栗を煮たそ うです。。。栗しか煮ることができなかったんでしょうかね(^^ゞ ところが、空海が帰ってきた時、天皇が、 「修円はすごいんだぞ」 なんて言ってしまったのが、ことの始まり。 負けず嫌いな空海が、「そりゃすごい」なんて言うわけない。 「それじゃ、私は柱の影で隠れて、修円が栗を煮るのの邪魔をしてや りましょう」 なんて言っちゃうんですからね。 お坊さんって、人徳者・・・ではないんですね。多分。 何度も言いますが、空海は負け知らずです。 修円は、いつものとおりに栗を煮ようとするのに、煮えない。 焦っていると、柱の影から出てきが、空海が、 「にんまり」 なんてするもんで、修円もつい、かっ!となって・・・。 で、お互いに呪詛合戦に発展するんだから、大笑いです。 ただ、この争いはなかなか勝負が付かず、どちらもなかなか死にま せん。 そこで策略を用いるのは、勝ち組の空海でしょう。 弟子に「空海は死んだ」と噂を広めさせるわけです。 「してやったり」と結願した修円は、その日のうちに、ポックリ。 また勝ってしまった空海が、 「私と張り合うなんて、修円とは何者なのだ?」 と調べてみると、ぐんだり明王だったそうです。 その上、空海は菩薩様なんだとか。 明王と菩薩の争いについて、今昔では、 「互いに『死ね死ね』と呪詛しけり」 と書いています。 明王と菩薩が、「死ね死ね」って、あんた(~_~) いやぁ、ほんと、空海って愉快なお坊さんですよね(←違う!)