採取地域:福井市 ひとこと: 原 典:福井市に伝わる伝説。3号さんが採集してきてくれました。 登場人物:柴田勝家公 物 語:戦争放棄を謳う日本だけれども、今までの歴史の上で、戦争が 一番長くなかった時期は江戸時代ということになるでしょうか? それまでの日本は、あちらこちらで、大きいの、小さいの、長 いの、短いの、いろんな戦争が起きていたのです。 戦争が起きるっていうことは、両者の実力が伯仲しているから。 だから、負けた側に同情が集まるのは当然かもしれません。 「あの時、こうしていれば」 きっと勝っていたからです。 特に、地元の武将で、人望もある武将が負けた場合。 人々は、そりゃぁ同情し、入れ込むでしょうね。 福井市の場合、庶民が特に同情したのは、柴田勝家公かもしれ ません。 勇猛な武将が、綺麗な妻・お市の方と、崩れ落ちる城の中で果 てるというのも絵になりますからねぇ。 柴田勝家公が妻と共に、北の庄城で自刃したのは、時に、天正 11年(1583年)4月24日のことでありました。 それから何年か経ち、人々の間に、こんな噂がたちました。 4月24日の月夜の晩。 九十九橋を、首なし行列が渡る。 でも、証拠はありません。 4月24日の晩は、どの家も硬く戸締りをして、決して外を覗 いたりしないからです。 「覗いたら、とり殺される」 そんな噂もありましたが、多分、それが理由ではないでしょう。 悲しい最期を遂げた、慕わしい武将の惨めな姿を見てはいけな い。人々はそう考えたのだと思います。 ある年、一人の女の人が、うっかり4月24日の晩、九十九橋 たもとでぼんやりしていたことがありました。 待ち合わせをしていたのか(その場合、相手はこの伝説を知ら ない人でしょうから、旅人かしらん)。 星空が美しくてついぼんやりしてしまったのか。 なんにせよ、彼女は、にわかに気づきました。 「今日は勝家公自害の日だ」 慌てました。 「早く家に帰らなきゃ。扉を閉めなきゃ!」 ・・・・・・・・・・!!! カパ。 カパ・カパ・カパ・カパ・カパ!! 馬一頭の足音じゃない。 20?30? そう行列の足音が向こうから聞こえてきたのです。 ダメだ。見ちゃだめだ。 あぁ、前を通る、通っていく。 早く通り過ぎて、通り過ぎてほしい。 見ちゃだめだ、見ちゃ。 あぁ、息苦しい。息苦しい。 でも、顔をあげちゃだめだ。 あぁ・・・!!! 彼女は、つい顔をあげてしまったのだそうです。 そして、噂が嘘じゃなかったことを知ったのでした。 静かに通り過ぎていく行列の男たちの肩の上には、なぁんもあ りませんでした。 その後彼女は亡くなってしまった、と言いますが。 勝家公の怒りに触れたためなのでしょうか? 覚悟の最期を遂げた武将が、その怒りを、無関係な人に向ける というのは、理屈が通っていないような気もします。 勝家公の祟りで人が亡くなるなんて伝説は、迷惑かもしれませ んね。 そこで、もし、首なし亡霊の行列を見てしまっても、ある言葉 を言えば、命はとられない、と言われるようになりました。 その言葉は? このページのどこかを探してください。 答えが見つかりますよ。