tonchi

道明寺の木患樹




  採取地域:大阪府藤井寺市
  ひとこと:道明寺に伝わるお話です
  原  典:
  登場人物:尊性上人 菅原道真公
  物  語:讒言により、大宰府に左遷された道真公は、出発の際、叔母の尼君に
       最後の挨拶にいらっしゃいました。
       そして、道明寺で書き写した五部の大乗経は、埋められました。

       道真公は、流罪になるわけじゃなく、単なる左遷なんですが、なんだ
       か、悲愴感が漂うのはなぜでしょう。

       やはり、それは、「無実の罪で」左遷になるからでしょうか。

       さて、そのお経が埋められた塚から、いつか、芽が出て、葉が出て、
       大木になりました。

       木患樹です。
       もくげんじゅ・むくろじと言うこの樹の実は、黒くて硬くて軽い種を
       つけます。

       そして、不思議なことに、このむくろじの実の胚芽は、経巻の形をし
       ていたんだそうです。

       さて、話は、九州・河内そして、鎌倉と、飛びます。

       鎌倉の田代寺の尊性上人は、善光寺で十七日参篭をしていました。

       参篭というくらいですから、他人との交渉は一切なく、退屈していた
       のかも知れません。
       不思議な夢を見ました。

       まばゆい人が出てきて、
      「河内国土師寺は天神の御在所なり。この寺の木患樹の実108個にて、
       数珠を作り、念仏百万遍を修行せよ。しからば、必ず極楽に生まれん」
       と告げたのでした。

       お話はここで終わっていて、この尊性上人が、極楽へ行かれたかどう
       かはわかんないんですけどね。

       面白いのは、「108個」「木患樹」「天神」などとごたまぜの要素
       がごたまぜのまま存在することです。

       108といえば、煩悩の数。
       煩悩の数の珠で作った数珠を持ち、珠を数えながら念仏を唱えると、
       煩悩が消えるなんて修行仕方があるようですね。

       また、木患樹は、無患子とも書きます。
       つまり、患わない・・・と縁起がよい樹木なんですね。

       でもって、それに「天神様」という要素が加わると、なにがなんだか。

       とにかく、めちゃくちゃおめでたいお話なようです。

       が、残念ながら、鍵がかかっていて、木患樹を見ることはできないの
       でした。

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