採取地域:京都市 ひとこと:なんちゅうか、情けない話です(^^ゞ 原 典:堤中納言物語 登場人物:中納言 姫君 物 語:なにしろ、優れた中納言なんです。 このお話の前半は、中納言の素晴らしさを最大限にアピールして います。 趣味人で、頭がよくて、頼りがいがあって、声もよく、楽器の演 奏をさせたら天下一品。 その上姿も若々しく美しい。 兄さん、女がほっとかないよっ!! そんな中納言は片思いをしていました。 どこの姫君かはっきり書いてありませんが、さぞ美しい姫君なの でしょう。 中納言は、声ひとつかけてもらったことがないので、どんな姫君 かわからないハズなのですが、一途に恋焦がれているのです。 気持ちがわからないこともありませんけどね。 現実逃避してる場合じゃないんじゃないの?とも思います。 さて、中納言は、ある日、思い余って、姫君を尋ねます。 声をかけていただくまでは帰らない、絶対帰らない。 僕、帰らないからね。と涙まで流す始末。 今までさんざ冷たくあしらわれてるんだから、泣いたって無駄な ことがわからないのが、この中納言が恋におぼれてる証拠ですね。 中立ちの宰相の君は、 「私が姫君だったら、絶対断らないのに」と内心ムカムカしながら も、 「泣いてますよ、どうしますか?(なんか言ったげなさいよ!!)」 と、姫君の気持ちを中納言の君になびかせようとするんですが、 「いつも、こういう場合はこうなさいませ、とあなたが教えてくれ るじゃない。なんで今日に限って、どうします?と聞くの?」 と逆効果。 宰相の君は、しかたないや、と、中納言に断りの返事をしに戻る と中納言の姿はありませんでした。 「断られるのがわかってて、返事を待つほど暇じゃないお方なのね」 と宰相の君は納得しますが、実は中納言は、こっそり、姫君の部 屋に忍び込んでいたのですね。 姫はびっくりはしたけれど、意地をはって、口を聞かないし、 中納言は、「無理やりなことはしたくない」と、ただ、声を聞か せてくれと泣いて頼むばかり。 それで話が進展するはずもなく、結局中納言は、な〜〜〜んもで きずにおうちへ帰ったのでした。 チャンチャン。 情けない話でしょ? 情けない話なんだけど、この二人が御簾越しに対峙している時の 気持ちをリアルに想像すると、なかなか色っぽいのですよ。 姫は、御簾越しに、中納言の男っぷりを見ているわけです。 「強引に入ってこないかしら?」 くらいは思ったかもしれません。 中納言はどう考えていたのでしょうか? 「強引に出たら、姫君とて、最後まで拒否はすまい」 それくらいのことは考えるでしょう。 でも、そうはしないんですよね。 「そんなことをして、姫君を悲しませたくないし、私はそんな下品 な男ではない」 なんて考えてたのかも? えぇいじれったい。 「どうするつもりなのかしら?なんで、ただ泣いてるのかしら? ど〜〜〜っしても、私から声かけろというわけ?冗談じゃないわ よ。男のあんたから、もちっと強引にでなさいよ!」 「声さえかけてくれたら、それをきっかけに話を進めるのに、どう して姫君は、声もかけてくださらないのか。」 「絶対声なんかかけないもんね」 「声かけられるまでなんもできないもんね」 「声かけないからねっ!!」 「声かけてくんなきゃ、こっちもなんもしないもん」 え〜〜〜〜〜いっ!!やってなさい。 こういうすれ違いってのは、いつの世もあるもんですねぇ。 平行線ってのは、どっかで折れ曲がらなきゃ、いつまでたっても 交差しないんだから。 相手が折れる前に自分が折れなさいっての。 ま、それができないなら、一晩を無駄に過ごしなさいってことで すね。 さて、このお話、原典の題名と全く違えています。 だって、原典の題名があんまりにも・・・。 「逢坂越えぬ権の中納言」 というのです。とほほほほ〜〜〜(ま、私のつけた題名もかなり とほほ〜ですけど)。