tonchi

花桜を折ったつもりだった話




  採取地域:京都府
  ひとこと:
  原  典:堤中納言物語
  登場人物:中将 源中納言の娘 源中納言の母
  物  語:この「堤中納言物語」は、ざっと見て、「オチがない」と思う
       話が多です(^^ゞ
       このお話はどんなもんでしょうか?

       主人公は、色好みの中将です。

       彼が、恋人の家から帰るところから、物語は始まります。

       頃は桜。
       夜桜を楽しんでいて、ふと気づくと、この当たりに住んでいた
       昔の恋人のことを思い出してしまいます。

       さて、色好みの中将のこと。
       勿論、どうしてるか、様子を探りに行ったものです。

       おう、花桜とは、この昔の恋人のことだったのか。

       違います。

       恋人の家は、破れ果て、かの人はどこに行ってしまったのか、
       とんと、わからないのでした。
       咳き込みながら通りがかった白髪の老人に尋ねても、
      「昔住んでた人はどっか行っちゃいましたよ」
       というばかり。
      「どっかがどこか?」
       なんてことはわからないのでした。
      「かわいそうに。尼でもなったかなぁ」
       なんて諦めるのが、この時代の貴族ですねぇ。
       薄情者〜〜〜(T_T)

       しかし、この破れ家に人の気配がないわけではないのが不思議。
       女の童がでてきたではありませんか。
       花と月を愛でる風流な女の童。
       この女主人は、さぞかしたおやかで美しい人に違いない、と決
       め込んだ中将は、覗き見を続け、その女主人を見届けます。

       確かにかわいらしい。

       調べてみると、かの女性は、亡くなった源中納言の娘で、入内
       が決まっている、とか。

       そうなると、猛然と恋心が燃え立つのが色好みというもんで。

       やれやれ、昔の恋人が尼になったのは、ほっといてもええんか
       い・・・なんていうと野暮になるんですよ。
       どう思います?奥さん。

       こうなると、行動が早い。

       早速、かの人の女房に話をつけさせ、入内する前に彼女を奪っ
       てこようという算段。

       乱暴なやっちゃ。

       早速、女房の手引きで姫君の部屋に忍び込み、夜具をすっぽり
       被って眠っているらしき彼女を奪いさり、自分の屋敷へと。

       ゆゆ・許せ〜〜〜んっ!!!

       さて、姫君には、彼女を目に入れても痛くないほどかわいがっ
       ているお祖母様がいらっしゃいました。

       もともと小さくかわいらしいお方だったのが、お年を召して、
       剃髪されて、今宵は寒い、とおっしゃっておりました。

       そんなお祖母様は今宵の騒ぎを知るはずもなく。
       知るはずもなく?
       知るはずがないのだろうか??

       いえ、一番知っていたのは、このお祖母様なのでした。
       なにしろ、彼女、寒くて、寒くてしかたなかったので、かわい
       い孫の部屋で夜具をすっぽり被って寝ていたのですからね。

       ざま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ごらんなさいっ!

       花桜、折ったつもりが、うば桜。

       と、中将は詠んだのかどうか。
       物語には、
      「その後いかが」
       と書かれているのみ。

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