採取地域:京都府 ひとこと: 原 典:宇治拾遺物語 登場人物:小藤太 小藤太の娘 婿殿 物 語:わたし、見ちゃったんです。 同僚の、小藤太殿の娘のところに、最近、男が通ってくるんです。 といっても、私達の時代のこと、通い婿は当然なんです。 だから、それは構わないんですけど。 小藤太殿は、源大納言定房のお殿様のお側役で、羽振りのよいお侍 だから、娘も後ろ盾ばっちり。 私は、そんな後ろ盾がないんですもの。ちょっと妬けちゃいます。 良い殿御に見初められないかしら。 ある雨の降る日のことでした。 その若婿さんは、彼女の局に忍んできたまま、朝になっても、帰ら なかったみたいなんです。彼女の方は、朝になったら、お勤めがで、 お殿様の御殿に上がっちゃうし。 でも、忍び込んだわけだから、お婿さん、見つかるわけにいかない んです。 屏風をたてて、こっそり隠れてるんだけど、見ててすぐ分かっちゃ いました。 「あ、昨日も、きたんだな」 って。 私、見てて、おかしくって。 雨は止まないし、小藤太の娘のお勤めはいつまでたっても終わらな いし。 お婿さん、隠れてるつもりか、着物を頭からすっぽりひっかぶって、 くさってるんですもの。 そのうち、小藤太殿は、 「婿殿、退屈してらっしゃるだろうな」 なんておっしゃって、お酒や魚を用意されたんです。 小藤太殿は、「縁から入ったら人が見るかもしれないから」と。 奥の遣り戸から静かにお入りになりました。 私、あることを予期して、はらはらしちゃったんです。 だって、お婿さん、まだ、お若くて、まだ、結婚したてだから、き っと・・・。ムラムラしちゃってるんじゃないかしら、お婿さん・ ・・って。 案の定、小藤太殿が、局に入って間もなく、 「ひゃっ!!」 という叫び声と、すごい音がしました。 私、やっぱり・・・って思っちゃいました。 お婿さんってば、頭からすっぽり着物をかぶったまま、 一物だけをほうりだして、 「それそれ」とばかりにムクムクつきだしてたんです。 お酒はこぼれるし、魚も落ちて散らばっちゃうし、もう、大変でし た。 お婿さんは、 「奥から静かに入ってこられたもので、てっきりわが妻が戻ってきた と思って・・・」 と冷や汗かきながら弁解してらしたけれど。 小藤太殿は、頭を強く打ったらしくて、そのまま気絶しちゃったか ら、婿殿の「あの物」は、ちゃんと見てないと思います。 男の人って、あれの大きさにこだわるんですよね。 見なくてよかったと思います。 争いのもとですものね。