花 言 葉:愛の幸福 (花) 私はあなたに心までうばわれた (木) あなたは性格がよく、表情がゆたか (果実) あなたの表情にまどわされる 伝 説:桃源郷と言えば、中国古来の「理想郷」のこと。 仙人が住み、俗世間から隔絶されたのどかな場所で、農作物や果実は たわわに実り、水は澄み、風光明媚な土地と考えられています。 道教ではその他にも、いくつか面白い、桃に関わるエピソードがあり ます。 たとえば、東海の度朔山の頂上には、三千里四方に枝を伸ばす桃の木 がありました。 東北に伸びる枝だけが門のようになっていて、そこから鬼たちが出入 りしていました。 しかし、この枝には、神茶と鬱塁という名の門番神がいて、悪さをす る悪鬼は捕えて葦の縄で縛り、虎に食べさせていますから、平和であ ったのでした。 また、並ぶものなき随一の仙女である、西王母が、武帝に桃を贈った という話もあります。 武帝は不老長寿を願って、さまざまな手を尽くしたことでも知られて いますね。 もっとも、少なくとも表面上、それは成功しませんでしたが……。 西王母は、彼に、「不老長寿を心がけるのはよいことだけれども、今 のような淫乱な生活を続けていては叶いません。でも心がけを改めれ ば地仙くらいにはなれるでしょう」と告げたと言います。 時は西暦前110年7月7日のこと。 仙女は七つの桃を携えて、武帝の宮殿を尋ねると、武帝に四個の桃を 授け、自分も三個食べました。 武帝が桃の種を植えようとすると、 「それは三千年に一度しか実がならないから、植えたって無駄ですよ」 と笑って止めたと言われています。 日本においても、イザナギが黄泉の鬼たちを追い払うために桃の実を 投げた話が語られています。 蛇 足:桃の花は、紅梅よりは色が薄く、桜よりは鮮やかです。 香りも同じ。 梅よりはささやかで、桜のように無香というわけでもありません。 桃園には、桃の果実を思わせる、甘やかな香りが、ほのかに漂ってい ます。 しかしなによりも、そのはなびらの、表現力の豊かなことは、梅や桜 をはるかに凌駕していると言えるでしょう。 ビロードのような質感に、豊かに寄せられた柔らかなドレープ。 大人になる少し手前の、可愛らしい少女のスカートを思わせる可愛ら しさです。 少し悲しい話もあります。 和泉日記には、 「父鬼というは、土人つたえて夫婦の鬼ありという。河内国の鬼住とい う所に母鬼という有、おほよそこれをあわせて夫婦とするか、母鬼村 ことにももをあまたに植えたり、鬼をはらふの故にううか。いといぶ かし」 とあるそうです。 ちなみに、この母鬼と父鬼の子は九鬼だそうですが、なぜ彼らは家族 一緒に住まなかったのでしょうね。 参考文献等:「道教の神々」 講談社学術文庫 窪 徳忠著 「おにのいる街 和泉地方の伝説」 和泉史談会発行小林 利郷編著 情報提供者: