竜胆(りんどう)
花 言 葉:私はあなたが悲しんでいるときあなたを最も愛する
伝 説:「まア政夫さんは何をしていたの。私びッくりして……まア綺麗な野菊、
政夫さん、私に半分おくれッたら、私ほんとうに野菊が好き」
「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き……」
「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のよう
な人だ」
民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。二人は歩
きだす。
「政夫さん……私野菊の様だってどうしてですか」
「さアどうしてということはないけど、民さんは何がなし野菊の様な風
だからさ」
「それで政夫さんは野菊が好きだって……」
「僕大好きさ」
伊藤左千夫の「野菊の墓」にある、若い二人の会話です。
この部分は有名ですね?
しかし、この後にもこんな会話があるのをご存じでしょうか?
「政夫さんはりんどうの様な人だ」
「どうして」
「さアどうしてということはないけど、政夫さんは何がなし竜胆の様な
風だからさ」
つまり、民子は政夫にやり返しているわけですが……。
先にある会話は、明らかな恋の告白。
「あなたはまるで野菊のような人ですね。そして私は野菊が大好きです」
こう告げられて、
「っふ〜〜〜ん、だから?」
な〜んて鼻くそほじくってるようじゃあ、いけません。
ここはぜひ、「ポッ!」とほほを赤らめていただきたい(笑)
とにかく、その後民子が、政夫を「りんどうのような人」と言い返して
いるからには、これもまた恋の告白であったでしょう。
言葉には出せない恋を雄弁に語る花。
秋の山道で見掛けたら、ちょっと思い出してみてください。
蛇 足:山道でポッと蒼く燃えている花。
猛火ではなく、静かな埋み火。
リンドウの花の花言葉が、
「私はあなたが悲しんでいるときあなたを最も愛する」
であるとは……何かとても意味深な気がするのですが……。
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