物語の分布 : 登場人物名(物語名):天稚彦(御伽草子) モデルとなった人物等: 同じテーマの世界神話:アムールとプシケー(ギリシャ神話) 鉄のストーブ(グリム童話) その他 物語の骨子:ある長者の家に、蛇がやってくる。蛇の要求は、長者の娘を嫁にもら うこと。そして、それを拒めば、おまえを食ってしまう、と脅すのだ。 長者には娘が三人いるが、上の二人は当然、蛇の嫁になることを拒み、 心優しい末娘だけが、「お父様のためならば」と、蛇に嫁ぐことに首 肯する。 蛇が指定した通り、川のそばに建てられた小さな小屋で、一人、娘が 怯えながら待っていると、蛇がやってきて、自分の頭をちょんぎるよ うにと教える。 娘が、小さな鋏で、言われたとおり蛇の頭を切ると、蛇は美しい男の 姿になり、そして、「自分は天稚彦である」と名乗るのだ。 娘と天稚彦は楽しい日々を送るが、ある日、稚彦は、「用事があって 天に帰らねばならない。もし、待っても帰ってこなければ、尋ねてく るように」と告げて旅立ってしまう。 そして、約束の37日目が過ぎても稚彦が戻ってこないので、娘も稚 彦を探しに旅立つことになる。 空に上り、出会ったのは、ゆうづつ(金星)、箒星(彗星)、昴など。 星たちに、稚彦の居場所を教わり、遂に夫の家を尋ねあてる。しかし、 稚彦の父親は鬼であり、人間の娘を嫁として認めない。あまつさえ、 嫁として認めて欲しくば、百足の蔵で一晩過ごすように、などと難問 をつきつけるのだ。しかし、娘が天稚彦から譲り受けた袖を「天稚彦 の袖」と言いながら振ると、百足は刺すことをしない。そこで、鬼は 次々といろいろな難問を出すが、それも、娘は天稚彦の袖を使い、や すやすとクリアしてしまう。 とうとう娘を嫁として認めざるを得なくなった鬼は、「月に一度だけ なら逢瀬を許す」と告げるのだが、娘は「年に一度」と聞き間違えて しまう。そこで鬼が、「それでは年に一度だ」と、瓜を地面に打ち付 けると、大水が沸き出で、天川となった。そんな理由で、娘と稚彦は 年に一度、7月7日の晩だけ逢瀬を楽しむことができるのである。 蛇 足:平安時代に成立した物語ですから、京都あたりの伝説でしょうか? しかし、このテーマの物語は、世界中にあるんですよね。 講談社+α文庫「決定版 世界の民話事典」によれば、朝鮮に「青大 将婿」という類話があるそうですから、「蛇婿」と、「難題をクリア して、恋人同士が再び出会う」というテーマがくっついたのは、朝鮮 半島あたりかもしれません。 「蛇婿」については、別項で考えたいと思います。 参考文献等: 情報提供者: