物語の分布 :奈良県宇陀郡曽爾村 登場人物名(物語名):お亀 夫 池の主 モデルとなった人物等: 同じテーマの世界神話: 物語の骨子:雪の降り続いていたある日、ある父子の家の前に病の女性が倒れた。 女性の名は「お亀」、伊勢国は太郎村の娘である。 病が癒えた後、お亀はこの家の息子の嫁になる。 ある日、お亀が太郎路池の水を溜めた井戸を覗き込むと、理想を絵に描いたよ うな美しい、男衆の顔が映り、 「今夜八ツ、太郎路池のほとりに来て欲しい」 と告げた。 その日からお亀は、家事は一切しなくなり、夜になると外出した。 草履はいつも濡れて泥まみれ。 家族が訳を尋ねると、 「子供が早く授かるように水垢離をしている」 という返事。 ある雨の降る六月、お亀は男の子を出産。 「私の責任は果たしました」 と姿を消す。 夫は男手で、子供を育てるが、泣き止まず、お亀を探し求めながら、太郎路池 の側までくると、突然、お亀が現れ、ものも言わず、子供に乳をやる。 ただし、子供に目をやるでなし、その姿には子供への愛情が感じられない。 「二度と私を探さないでください」 お亀はそう言って、姿を消すが、夫は子供が泣き止まないとて、またお亀の名 を呼びながら、太郎路池に来てしまう。 すると、 「あれほど、二度とくるなと言ったのに、なぜ来た?」 と蛇の姿になったお亀が現れ、大口を開いて襲い掛かった。 命からがら逃げ帰ったが、夫はその後すぐ亡くなった。 子供は無事に成長した。 今でも、 お亀が襲い掛かった場所を「大口」。 一直線に追いかけてきたところを「立堀(たてほり)」。 大蛇が疲れて休んだところを「弊足(びょうそく)」。 水を飲んだところを「水舌(みずのみ)」 と称する。 そして、太郎路池は、「お亀ケ池」と呼ばれるようになった。 蛇 足:曽爾高原の中にある「お亀ケ池」の伝説です。 いろいろ考えさせられる話です。 結局この息子は誰の子供だったのか?蛇?それとも人間の夫? そして、成長したこの息子は何も起こさなかったのか? お亀は、主に魅入られて蛇になったのか? 池の底でどのような暮らしをしているのか? 雪の日にやってきて、雨の日に出産し、立ち去った。 太郎村のお亀とは、何を意味しているのか? この曽爾と太郎村には何か確執があったのかもしれません。 それは、水の権利の奪い合いなどということなのかも。 不気味さの際立つ話ですね。 **後記** こたつ城主様から面白い発想を頂きました。 「でも例えば、さんざんムゴイ目に会わせて出て行った女房の悪口を綴った話だ ったり……(笑)。 行き倒れを助けたとか、家事を一切しなくなったとか、 他の人が見てない事だけ、女に不利に強調されてる所が、ちょっと気になりま した。何か一方的な感じがして(^^;)。 一方、水垢離とか男子出産とかは、多くの人の目に触れる可能性があるから (出産はお披露目の場とかで)、この点は他の人も見聞きしてる可能性がある と思うんですよ。 水垢離はもしかしたら、他の人に見咎められて言い訳かな〜とか。もしかした ら思い余っての入水自殺かもしれないな〜とか(^^;)。」 やれ人身御供だとか、やれ生贄だとかばっかり考えていて、考えが偏ってしま ってたようです(^^ゞ 目からウロコでした(#^.^#) 参考文献等:岩城千春文「ぬるべの里昔ばなし」 情報提供者: