夜叉ケ池の伝説
物語の分布 :岐阜県安八郡神戸町
登場人物名(物語名):蛇 夜叉姫 安八太夫
モデルとなった人物等:
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物語の骨子:むかし、神戸の村に安八太夫という長者がいた。
しかし、ある年、雨が全くふらず、田畑が乾いてしまった。
安八太夫が考え込んでいると、足元に小さな蛇がまきつく。
思わず、
「蛇よ、おまえが雨を降らせてくれたら、おまえの望みはなんでも叶えてやる」
と言うと、その日から、雨が続き、田畑は潤った。
しばらくして、安八太夫のうちに、若衆がやってきて、
「自分は先日の蛇である。娘を嫁にもらいたい」
と告げた。
安八太夫の三人の娘のうち、中の娘である夜叉姫が蛇の嫁になることを承諾し、蛇
の化けた男衆と一緒に、揖斐川へと没した。
一週間後、安八太夫の夢枕に夜叉姫が立ち、
「紅、白粉、匂い袋」
を乞うた。
安八太夫がホォの葉にそれらのものを乗せて、池に浮かべると、それは風もないの
に、水面をすべり、真ん中あたりで水中に沈んだ。
安八太夫が、その池を尋ね、夜叉姫の姿を見たい、と祈ると、
ある日、池の中から大蛇が現れた。
安八太夫は、驚いて地に頭を伏せたが、再び顔を上げた時には、大蛇の姿はなかっ
た。
そして、大蛇は二度と再び姿を見せることはなかった。
その池は、現在、夜叉ケ池と呼ばれている。
蛇 足:泉鏡花の同名の小説は、玉三郎主演で映画化され有名ですね。
ただし、物語はかなり違います。
泉鏡花の小説では、百合というはかなげな美女が主役です。
彼女は、毎日鐘を撞くのですが、それは、
「夜叉ケ池が氾濫しないように」。
彼女は、夜叉ケ池には龍神が封じ込められていて、毎日きちんと鐘を鳴らせば、そ
の龍神が、池を溢れさせないように守ってくれるのだ、と信じているのです。
ある年、村に旱魃が起きます。
そのために、雨乞いの儀式が行われることになるのです。
そして、こともあろうに、その儀式で差し出される犠に選ばれたのは、この百合で
ありました。
逃げる百合、彼女に恋し、彼女を救うために村から連れて逃げようとする晃。
しかし、彼女は逃げることは叶わず、自決して果てます。
その晩、鐘が撞かれることはありませんでした・・・。
というのが、泉鏡花の「夜叉ケ池」です。
伝説よりもさらに幻想的ではあるのですが・・・(^^ゞ
さて、この伝説の面白いところは、夜叉姫が蛇の姿に化身して、表れるくだりで
す。
蛇に嫁いだ女性はどうなるのでしょうか。
蛇に食われてしまうのでしょうか。
それとも、蛇が人間に化身し、幸せに暮らすのでしょうか。
蛇と人間として結婚生活を続けるのでしょうか。
天稚彦物語では、蛇は人間になりました。
滝壺の伝説では、蛇と人間として結婚生活を続けたっぽいですね。
この夜叉ケ池伝説では人間の娘が蛇に変わってしまいました。
それを悲しいことだと取るか、
「夫と一緒になれてよかったね」と取るか。
まぁ、大半の人は、前者かもしれませんね(^^ゞ
でもまぁ、惚れてしまえば、あばたもえくぼってことで(~_~)
当の娘は結構幸せかもしれませんよ??
参考文献等:伝説(でんせつ) 夜叉(やしゃ)ヶ池(いけ)
情報提供者:怪異・日本の七不思議 メーリングリスト