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恩智神社 御供所神事




11月24日。
恩智神社の御供所神事は、曜日に関わらずこの日に行われています。

以前からずっと、このお祭を見学したいと思っていたのですが、
平成18年、やっと念願が叶いました。

私達が神社に到着したのは、午前9時。

お祭が始まるのは8時ですから、
奉仕なさる皆さんのお祓いなどは終わってしまった後でした。
前日までの曇天から、爽やかな秋晴れへと変わった境内は、
晴れやかに輝いています。

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お祭は、その名の通り、「御供所」にて催行されていました。

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このお祭において、主に供物を調製されるのは、
「御供所の社家」と呼ばれる、13人の人々。
このお祭が始まった十世紀から、血を途切れさせることなく、
代々世襲にて奉仕なさってきたそうです。

つまり、いくら恩智神社を崇敬していても、
「あの〜、御供所の社家に入れてくださ〜い」
といって、OKが出る確率は、0なわけですね。
これは、すごいことだと思うわけです。
どないでしょう?

しかし、そもそもどうやって、この13の家が選出されたんでしょうね。

神職さんに伺ってみると、
「多分、お祭が始まった当時、有力な氏子さん13人が選ばれたのでしょう」
とのこと。

中でも・・・苗字を出すわけにもいかないので控えますが、
ある家の方は、
恩智神社の祭神である、「元春日神」が、
千葉からこちらにお渡りになった時、
神を祀って一緒に来られたという家柄だとか。

「春日」ということですから、もちろん、藤原氏なのだそうです。

この恩智神社は本文にもありますように、住吉大社と大変関係の深い神社です。
そしてまた、「元春日神」を祀るように、春日大社との縁も強い。
神様の交際範囲(?)の広さには感心するばかりなのですが・・・。

私には、もっと興味を惹かれることがあるのです。

それは、このお社が、
楠木正成公の「三水分(みくまり)」
の中の一つであるということ。

楠木正成公は、言わずと知れた、南朝の忠臣。
山伏を束ねていたといわれていますが、
川の流れを掌握し、水運で利を得ていたともされていますね。

楠木正成公の本拠地であったとされる、「建水分神社」が、「上水分」。
富田林の「美具久留御魂神社」が、「中水分」。
この「恩智神社」は、「下水分」と呼ばれていたといわれます。

楠公さんと関係が深いことは、
この神社のすぐそばに、
楠公さんの腹心であった恩知左近のお墓があることからも知れるでしょう。

往古、恩智神社はもっと標高の低い、街道そばに鎮座したと言います。
しかし、恩智左近は、この地に恩智城を築くとき、
「城から神を見下ろすのはよくない」
と、お社を山の上に遷したのだそうです。

恩智左近は、それだけこのお社を尊崇していたということでしょう。

さて、御供所神事では、
まず、奉仕する方々が潔斎をされるところから始まるようです。

そしてその後、御供所に入り、
まず、米の粉をお湯でこねるところから始まります。

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熱い湯で捏ねるわけですから、
作業をする人は大変。
「一目おかれる」存在なようです。

粉がこねあがったら、今度はさっと湯がきます。

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湯がいた「餅ネタ」は臼に移され、
氏子さん達が杵で搗くんです。

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これまた大変な作業らしく、最初は賑やかだった氏子さん達が、
どんどん無口になっていく・・・(笑)
ちなみに、全工程の中で、
氏子さんが担当されたのは、この「杵つき」だけでした。

よく搗かれた餅は、「御供」の形に調製されていきます。

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「大ブト」と呼ばれるのはこんな形↓

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この日作られる「御供」は、組み合わせると人の形になるのです。
大ブトは人の胴体になる部分。
中に豆が7〜8粒入ります。
宮司さんいわく、
「豆は内臓」
だそうです。ひ〜〜〜(^^ゞ

「マガリ」がこれ↓でしょうか・・・
これは確認するのを忘れたんですが(^^ゞ
人の形にされるとき、これらが脚や手になります。

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形が出来上がったら、今度は、油で揚げていきます。

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揚がったら、手早く紙の上に広げておられますね。

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これが、御供のできる行程です。

これを、朝の8時からお昼過ぎまで、何度も何度も繰り返されます。

13人の御供所の社家さんは、一度潔斎をされると、
トイレに行くことも、御供所を出ることも許されないのだとか。



さて。

「千年も続いた世襲制」
「祭りの間は潔斎が求められる」

などのことから、私は、とても粛々としたお祭を想像していたんですね。

が・・・。
賑やかなこと(笑)

旦那がカメラを構えていると、
「正面から撮って!!」
とポーズを取ってくださる。
(が、肖像権などの観点から、
ここではお顔の映ってない写真を選んでおります(^^ゞ)

どんな簡単な質問にでも、詳しく答えてくださる。

なにより、部外者の私達が、御供所を覗き込んでも、
ごく自然に受け入れてくださる、この寛容さよ。

本当に神を信じ、神を尊敬しておられる方々は、
その崇敬の念でもって、十分に清められているのかもしれません。

去年の場合、神事が終わったのは14時ごろだったとのこと。
私達は一旦お暇をし、昼ごはんを食べることにしました。

神社に戻ったのは、12時半ごろ。

が・・・御供所は無人。
綺麗に片付けられてるじゃあありませんか!!

げげ〜〜〜ん・・・。

御供えが最後にどうなったか見ることが出来なかったのも残念ですが、
ちゃんとお礼をいえなかったのが、なんともかんとも(T_T)

がっくりしていると、 多分宮司さんの奥さんだと思われる方が、御供所へ来られました。

「出来上がった御供は、既に拝殿に捧げられている」
とのこと。

「なるほど」
と納得している私に、
「よかったら、直会にどうぞ〜」
と声をかけてくださったので、
「とにもかくにもお礼を言わねば」
と、参集殿に上がらせていただきました。

一番いろいろとお話をしてくださった神宮寺地区の区長さんと、
宮司さんに、
まずはお礼。

そうするとですね・・・。
「この汁は珍しいものだから、是非食べていきなさい」
と・・・。

辞退すべきだとは思ったのですが、
「珍しいものだから」
という言葉に滅法弱いんですね、σ(^^)

そんなわけで厚かましく、指し示された席につくと、
その机は、「御供所の社家」の人達が集まってました。

明るいお祭ではありましたが、
「御供所の社家」の方々は奥に座っておられたため、
あまりお話をすることができませんでした。

それが、今、こんなにゆっくり、お話できるなんて・・・。
ううう・・・嬉しい(T_T)

お汁は白味噌仕立て。
社家の方々によると、

汁は、餅を茹でた汁。
菜っ葉は、餅の油を受けたもの。
餅は当然、今日こねたもの。

そこに、ブリを加えて白味噌を溶いたものが、この汁なのだそうです。
まさに、「御供所神事の直会」にふさわしい汁。
その他、ブリの照り焼きや、かまぼこなどが振舞われていました。

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甘くて暖かくて、ほっこりしますね。

「もっと静かなお祭だと思ってました」
と言うと、
「昔は静かやったんや!」
とのこと(笑)

「わしらが参加するようになってからうるさくなった」
とおっしゃる3人衆は、確かに、賑やかで楽しそうな人達です。

面白かったのは、この言葉。

「お祭を賑やかにしてしもて、バチあたってるかもなぁ。
でも、バチあたってても気付かへん」

そして、この言葉。

「村の人達だけで守られているお社で、
こんなに立派な神社はまずないで」

後者の言葉はその通りだと思います。
日曜日でも祝日でもないこの神社のお祭に、
これだけの人々が、自然に集まることの素晴らしさ。

そして、まったく諍いごとらしきものがなく、
皆が楽しそうに進行される神事のありがたさ。

皆が役割に応じて、本当に熱心に、
そして幸せそうに奉仕なさってるのです。
千年も続いた、この神事に。

社家の方々のこの言葉から、
「神に対する尊敬と愛情」
「神の存在に対する確信」
そして、なによりも、
「神に守られているという安心」
をしみじみと感じたわけです、私は。

お祭の後、なんと、私達は、
「おさがり」
までいただいてしまいました(^^ゞ

家に帰って開いてみると、
いつの間に作られたのでしょう・・・。

手足になるはずの、棒のような多分、「マガリ」と。
可愛い白犬さんが入っていました。

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縄文の人々は、犬を大切なパートナーとして、
一緒に土の下に眠るほどに愛したと言います。

この神社の神様はいつからこの地に鎮座なさっているのでしょうか?
もしかしたら・・・。
それは縄文の昔に溯るのかもしれませんね。

さて、次の日、写真を持って再度お邪魔しましたら、
おさがりは社家の方と氏子の方の分しか用意されていないのが通常で、
この年はたまたま、本当にたま、たま、2つ余分があったのだそうです。

その上、犬の形の御供は、
氏子さんと社家さんだけに配られるものなのだそうです。

ですから、私達が、このおさがりをいただけたのは、
本当に本当に、本当に「ありがたいこと」。

感謝の上にも感謝せねばなりません。
ありがとうございましたm(__)m


また、なぜ犬の形であるかというと、
「多産の象徴」という意味ではないかという話しがあるくらいで、
はっきりしないんだとか。

興味はつきませんね。

ともあれ、ちょこまかと見学をさせていただいた私達に、
親切にいろいろなお話を聞かせてくださり、
写真を撮影させてくださり、
直会にまで呼んでくださった、
宮司さん、神職さん、社家の方々、そして氏子さん方。

本当にありがとうございましたm(__)m

伝統と親しみやすさの共存するこの神事で作られた御供は、
御供神事の2日後、11月26日に催行される秋祭りで、
神楽の奉納をされた方に授与されています。

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